あおむしの本棚

備忘録を兼ねた読書ブログです。小説・実用書・児童書・絵本など

法医学本『死体格差』

 

タイトルの印象が強かったのと、コロナとか死因で扱いが変わるのか?と気になって読んでみたのですが。

死因が判断される前段階でもう既に地域による解剖率の違いなどの格差がある、という日本の法医学というより死因究明制度が抱える問題点を浮かび上がらせた本でした。

 

・事件性が考えられる場合→司法解剖

・事件性はないが死因不明→調査法解剖or行政解剖

〇前段階の事件性があるかないかを判断する検視を行うのは医学的な専門知識のない警察官。

〇検視に立ち会って死因を判定するのは法医学者ではなく警察医(地域の開業医など)

⇒結果、多くの犯罪死を見逃してきた

〇海外では死因究明のための独立した役所が存在する(アメリカ:検視局)

世界をみても、日本のように警察が仕切っている国はほどんどない。

〇検察や警察が組み立てた見立てに都合の良い証拠として法医学が利用されてしまう危険性がある。都合の良い鑑定を出してくれる法医学者に依頼をしたり、記述を消すよう指示されたり。

〇きちんと司法解剖を行えば40万ほどかかる費用だが、12万程度で行っている県がほどんど。

それ以前はもっと少ない謝礼金でほどんど大学が負担していたが、新法ができてもこのような(費用以外の面でも)現状の改善はできないものだった。

 

根本的な制度の問題、予算不足、法医学者の少なさ…いろんな問題がある厳しい現状のなかで、死者の尊厳と生きている人々の公益が守られている現状はもっと広く知られていなければならないと感じました。

海外との比較のなかで出ていましたが情報のアクセスのしやすさや透明性も大事ですね。