あおむしの本棚

備忘録を兼ねた読書ブログです。小説・実用書・児童書・絵本など

読了『戦争とバスタオル』

 

タイトルが気になったのと、ゆるい雰囲気の表紙から硬くなく読みやすいのかな、と手に取ってみました。

 

タイのジャングルにある川原の露天風呂、沖縄最後の銭湯、韓国の温泉施設、現在はうさぎの島として有名な大久野島の温泉休暇村……。

安らぎをもたらす存在である温泉の、その湯けむりの先にある戦争の歴史の真実を取材した本です。

異世界もののライトノベルでは転生や移転先で温泉をつくって評判になる作品がたくさんあって日本人の風呂好きを体現しているけれど、現実世界の外国で日本人が作った温泉には、ただ風呂好き民族と笑って流せない過酷な歴史があることが知れます。

戦争で受けた被害についての知識はなんとなくあるのに対し、加害については正しく学んでいないし知らないことが多いのだと気づかされました。

タイのジャングル風呂への取材に行く際に利用された泰緬鉄道。

戦時下に日本軍が捕虜とアジア各国からの徴用した労務者を強制労働に駆り出し、

過酷な労働により多くの命が奪われたことから、泰緬鉄道よりも「死の鉄道」と呼ばれることのほうが多いそう。

映画『戦場にかける橋』がこの史実をもとに作られていることも私はよく知らず、また日本国内の取材の部分では、少年時代を毒ガス工場で働き健康被害をうけた戦争語り部の方が自信を「被害者であるだけでなく加害者」と話されていて、日本の戦争についてきちんと知らず、知ろうとせずに他国の戦争やら日本と他国との関係やらについて漠然と考えをめぐらすことの恥ずかさを認識した次第です…。

戦争関連の本にはなかなか手が伸びないのですが、この本は現地の人と一緒にお湯につかりながら取材をしていたりとお風呂が良い緩衝材になって読みすすめることができました。